息子よ
今日は、タイトルにあるとおり、失敗との付き合い方について話そう。これも、人生を生きていく上で対応の難しい問題だ。
まず、失敗には大した問題でないことと、人生を変える大きな失敗との二通りがある。そして、よほど君が自分をコントロールできない人間でない限り(※)、後者になるような機会はそうそう訪れるものではない。そして、言うまでもないことだが、”ここぞ”という場面では、失敗しないよう準備をしっかり整えていくことが必要だ。(※カッとなってからといってすぐに人に危害を与えるような人物は、常に人生を失うリスクに晒されている)
恐らく、この点については大人になった君も賛同してくれるだろう。例えば大学や高校等の入学試験。仕事を始めれば、必ずやここ一番という苦しい局面や何が何でも成功させたいプレゼンといった場面は多く登場する。
そして、ここで父さんが君に伝えておきたいことは、人生において、ある程度は失敗や挫折というものに直面することは避けられないということだ。もちろん、もしかすると君は結構な大人になるまで挫折を知らずに成長するかもしれない。その場合は、おそらく君が120%の準備をもって事に当たる完璧主義の人間か、あるいはそもそも難しい課題に挑戦しない人間になっているかのどちらかだろう。父親としては、せめて前者であることを望みたい。
ただ、残念ながら、それが生涯続くということはあり得ないし、続けようと思うと非常に張り詰めた精神状態で一生を過ごすことになる。これは、実は君自身にとっても、周囲の家族・友人・同僚などにとっても、ある意味で不幸なことだ。完璧主義者は非常に頼りになるが、その分、自分や周囲に過剰な準備を要求し、追い込み過ぎてしまうことも同時に起こりうるからだ。これは当事者にとって決して幸せなことではない。
話を戻そう。父さんは、若いうちから色んな失敗をして、挫折経験を経ていくことは大事だと考えている。もちろん、成功体験がないと自信を持てなかったり、何かを成し遂げる方法を知らずに大人になってしまうから、バランスは重要だ。だが、人生は課題の連続であり、成功し続ける能力と同じくらい、失敗や挫折から立ち直る能力を持つことが重要で、いずれも身に着けてないとしなやかに生きていくことは難しい。
え?そんなことは分かっているが、どう立ち直ればいいのかって?
とても良い質問だ。父さんは成功と同じくらい失敗も多く経験しているが、挫折経験に伴う辛い気持ちを克服するには、まずは、失敗や挫折があったからといって自分の存在そのものや資質・個性までを全否定しないことだ。120%の準備と努力を備えても、自分がコントロールできない影響でうまくいかないこともある。もちろん、コントロールできる範囲を広げる努力は最大限すべきだ。失敗や挫折を恐れる気持ちが努力のドライブになることも多い。だが、その努力を経てもなお、全能の神でない以上、うまくいかないこともあるという気持ちの受け入れができないと、人はその傷に耐えられないんだ。
次に大事なことは、挫折や失敗は成功の対義語ではないということ。むしろ、失敗はより良い結果=成功までの一つのプロセスであるという理解をしておくことがとても重要だ。失敗や挫折の中から、自分のアプローチが良くなかった部分を見い出し、それを練習や勉強でクリアしていく。この繰り返し中で本当に逞しい人間が作られていく。だから、挑戦することや挫折することは、本来、恐れるものではないということが分かってもらえると思う。
父さんはこんなふうに考えているから、君が生まれて以降、父さんは君が失敗したり挫折したりすることそのものについて、叱ったり怒ったりすることはないだろう。むしろ、重要なことはそれまでにどういう準備をしたのか、そして失敗ののち、君がどういう態度や姿勢を示すのか、そこをよく注視していきたいと思う。そして、君がそういう目に遭わないように自ら努力する時、あるいは絶望の淵から立ち上がる時には、十分な支援をしていきたい。
最後に、時が解決するしかない部分もあることを伝えておこう。恋愛のように、思いを寄せる相手に自分を受け入れてもらえない時の心の傷は筆舌に尽くしがたい。こんな時は時が解決するのを待つか、新たな出会いを求めるしかなかろう。君がそういう経験をしないことを望むばかりだ。
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