感謝というもの

生きていくこと

息子よ、君はいま、君の母さんのお腹の中だ。君が生まれてくることが分かり、僕たち夫婦に非常に大きな喜びがもたらされたことは前回話した。

ただ、君をお腹に宿してから、母さんには”つわり”という症状が起きている。男である我々にとって、経験することのない症状だが、妊娠した女性の多くに起こる非常に不快(らしい)な症状だ。おおむね2~3か月は続く。母さんも例外ではなく、このところ、ほぼ終日ベッドの上にいる。

母さんに言わせれば、これは”人生最悪の二日酔いが毎日続く”というほどのものらしい。この例えを聞いてようやく、父さんは事の深刻さを理解した。なお、君がこの例えを理解するにはまだ20年ほどかかるだろう。知らなくても良いが。

ちなみに、君の母さんは、本来であれば日本酒と寿司、ワインとチーズといった組み合わせを楽しむのが生きがいといっても良いくらい大好きだ。ただ、妊娠すると、アルコールも生ものも口にすることができなくなるので、君を安全に生むために、このすべてを我慢している。

だからというわけではないが、今回は君に、人生における「感謝」というものの大事さを伝えたい。父さんは、感謝することの意義は、2つあると思っている。

1つには、それによって人生(の見え方)が豊かになるということだ。父さんが考えるに、人生を無駄にしてしまう最大の不幸の一つは、不平不満や怒りを募らせて生きることだ。こういう負の感情は、確実に君の人格を捻じ曲げ、そして人を遠ざけ、人生を蝕んでいく。

自分が生を受けたこと、そして、様々な人達の仕事の積み重ねによって日々の生活が営めること、すべてに感謝の気持ちをもって接することだ。そうすることで、自分が日々何気なく暮らしていることの有難みを感じ、平穏で満たされた気持ちで一日を終えることができるだろう。

2つ目の理由にも関係するが、特に、家族や友人、仕事の上司・同僚には些細なことでも感謝の気持ちを伝えよう。こうした人達は他の世間一般の人達よりも君に親切であることがほとんどだ。たとえば、親である僕たちは、君が安心して気持ちよく暮らせるように安全な家や食事を用意したり、可能性を広げられるように教育の機会を用意したりしていくはずだ。友人や同僚は、自分の喜びを分かち合いたくて、時には悲しみを一緒に受け止めてほしくて君に何かを伝えてくれたりするだろう。

ここでよく考えてほしい。こうしたことは全て当たり前ではない。少なくとも社会が君に親切にする義理はない。にも拘わらず、親切心や愛情・友情、時には利得を理由に君と接点を持とうとしてくれる。こうした、自分を支えてくれる人達のおかげで暮らしていけること、孤独を感じないでいられること、こうした全てのことに感謝しよう。

実は、これが社会で生きていく知恵でもある(端的に言えばこれが2つ目の意義だ)。こういう心の姿勢や態度を持つ人のところにいるのは心地いいから人は集まってくるし、協力を得られることができる。人が自分人一人でできることは少ないから、常に感謝の気持ちでいるようにし、人の力を引き寄せよう。直接的に目に見えなくても、こういうことの蓄積が少しずつ、でも確実に君の運命を左右する。

僕も君に感謝しよう。僕たち夫婦の子供として来てくれたことに。本当にありがとう。

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